ソラニンがヤバイ
ソラニンが相当ヤバイ。このマンガ本当にイイ。
ソラニン 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)
ソラニン 2 (2) (ヤングサンデーコミックス)
1巻の4分の1くらい読んでこりゃなんかヤバイなと感じ、
紙を置き、ペンをにぎり、メモをとりながらマンガを読むという変態行為に出ました。
内容
同棲中の芽衣子と種田が描く普通であり普通ではない日常。
魅力的すぎる普通を描く、それがソラニン。
2巻なのであまりストーリーを語ってしまうとおもしろくないので、キーワードだけ。
留年・就活・フリーター・ニート・社会人1,2年目・モラトリアム・働く意味とは
何がしたいのかわからない・夢を追いかける恐怖・平凡な安定・夢の挫折・現実
恋愛・結婚・将来の不安・退社・地元・親の仕事・友達・そして様々な別れ
まさに今のボク達の日常そのもの。
青春の苦悩と、モラトリアムの心地よさ、学生から社会人の間の不安定な恋愛の不安と幸福の描写が見事。
見事すぎる。秀逸の一言。
そしてゆるい幸せは長くは続かないのだと気づかせてくれ、働くことへの勇気をボク達に与えてくれるはず。
多分、大学3年〜社会人3年目くらいの人は読むと感じる部分がとても多くあると思うし
働くとは何で自分とは何なのかを強く感じることができるはず。
そして僕も昔の自分を種田と芽衣子に見ているようで。
名フレーズの数々
ソラニン 1
大人は「まぁいいや」のカタマリだ。
・・・捕まれなければまぁいいや。ココロなんて無くてもまぁいいや。
どこかで戦争や災害が起きてたくさん人が死んでも自分が幸せならまぁいいや。(P9)
加藤の朝のニュースの描写
まぁいつも通り株価が上下してどっかで殺人があって旬の魚がおいしいですね、なんだけど。(P45)
鮎川が昔を回想するシーン。
あたしの詞なんて歌うために無理矢理ひねり出した作りモノで、
こんな平坦で曖昧な日常に生きてるあたし達からは、悩むために悩んで
こねくりまわした贋物しか産まれてこないって。(P86)
種田が夢を追いかけるか平凡な安定を悩むシーン。そこには
ポジティブ・ネガティブ・協調性・猜疑心・愛・性欲・不安・無気力・バカ・・・
様々な種田が存在しており、それはボク達にも言えることで
何かを決める時、様々な自分が様々な視点を持って決めているんだと感じる。
行動する前に結論を出したがるのは俺の悪いクセだね。(P118)
種田が昔憧れていたバンドのボーカル「サエキ」にサラリーマンになった姿でレコード会社で会った時のサエキのセリフ。
君には僕が負け犬に見えるかもしれないが・・・僕はまだ戦っているつもりさ。
華々しい場所だけが戦場じゃないんだ。君もいずれわかるだろうよ。(P161)
なんだか、自分が高校生の時、俺はこうはならないと思ってた親に言われた気がしてならない。
会社を辞めて2ヵ月半経った時、このゆるい幸せを感じる芽衣子の言葉。
時折、自分が社会にまるで貢献してないのを思い出して、
まるでこの世に存在しない死人のような気分になって、すごく怖くなる。実はそんな夜もあるんだ。
・・・おかしいな。
死んだように生きるのがヤで会社を辞めたハズなのに(P169)
ソラニンの歌詞の一部
たとえば ゆるい幸せが だらっと続いたとする
きっと悪い種が芽をだしてもうさよならなんだ
ソラニンはジャガイモの芽に含まれる毒の名称でありそれを示すように作中にジャガイモが登場する。種田が別れ話を切り出した後、種田が失踪するシーンでは、芽衣子宅にあるジャガイモは大きく長い芽を出している。まさにここの歌詞のゆるい幸せから出る芽がこの作品の全ての本質でありコンセプトなのだと僕は感じる。だから「種田」であり「芽衣子」であるのだ。
ソラニン 2
2巻は全体的にストーリーの集約といった内容。総括して見ると、バンドの演奏時ホームな空気の中での演奏はない。客席のノリや評価はついてこないけれど、それが他人に流されることない意思決定、自分の中での解決や仲間と作り上げた決定を見事に描写している。そしてそれが芽衣子のみにスポットライトを当てた「曲が終わる・・・」「曲が終わった・・・」に集約されているようだ。
別れの状況下での気持ちの描写が秀逸の一言。
すかすかの2DKに、
たくさんの「もしも」が充満して、
・・・苦しい。(P44)
二郎が芽衣子の「人生って何?」「今の生活で満たされてる」という問いに答えるシーン。
そりゃ不満を言ったらキリないさ。でも俺、今日はなんかすげー楽しくて。
たぶん俺にとって、人生ってのはただ生きてくってことでいいのかもな。(P158)
P162で二郎が芽衣子のほおの傷を隠すバンドエードを無理やり剥がすシーン。
芽衣子が事件後(ネタバレしないように極力隠しています)テレビを投げガラスで切った時に出来た傷、自分が予想もしないことが起きた時、忘れたいのではなく自分に傷を作ってでも今の気持ちを忘れてはいけないという衝動にかられる。まさに何かを背負ったのと同じように。肉体的な傷はいつか消える。それを必死にあえて意識しつづけようと芽衣子はバンドエードを張り続けているのだ。それを二郎や仲間が無理矢理剥がしてしまう。芽衣子を支え、傷を癒したのが彼らなのだということを示唆している。
ここの描写、素晴らしい。
この心理を理解しているのは作者が同じ境遇を経験しているとしか思えない。
でないとかけない。そうではなくてただの単純な心理描写なのであれば少し残念。